主人がある日引き出しを整理していたら、かれこれ30年以上前のものとおもわれる現在のものとはサイズが違うポンド紙幣がでてきました。お母様が昔昔、ロンドンに行かれた頃に使いきらなかったらしい。
ものは試し、イングランド銀行に問い合わせてみたらどうだろうという私の提案でやってきましたのが、ロンドン金融街「シティ」の中心。
というのも、女王様のお姿の入った紙幣に時効はないだろうというのが私の考え。ちなみにフランスフランがユーロと取り替えることができるのは10年足らずだとおもいましたが・・・さて、どうなるでしょうか?
警備の方に事の次第を説明すると、「勿論、お取替えさせていただきます」と微笑まれました。
セキュリティの検査を受けて、こじんまりとしていながらもぴしっと格調の高い場所に通されます。
窓口のうら若き女性行員が、20年前にBBCでよく話されていたような鼻から上に空気がぽんぽんと抜けるような(変な表現ですが)、超・RP(Received Pronounciation)アクセント(この場合、超がつくので格調が高すぎてわかりにくいといいたい)で記入書類の説明をする・・・思わずのけぞってしまいました(汗)。
いろんな意味で、貴重な体験をさせていただきました。
銀行の隣にありますのが、それこそ金融街「シティ」のルーツのような建物。
現在はエルメス、グッチ、モンブランなどのブランド店とレストランが入っている綺麗なショッピングセンターになっていますが、その名も「ロイヤル・エクスチェンジ・Royal Exchange」。

写真をクリックしていただくと、素晴らしい彫刻がよくご覧いただけると思いますが、かなり意味深長な旧約聖書からの引用が彫られていたりします。
THE EARTH IS
THE LORD'S
AND THE FULNESS
THEREOF
「地とそこに満ちたるものは主のものなり」。
この主(THE LORD)とは誰をさしているのかはいろんな説があるところ。
一方、この建物の歴史もいろいろ興味深いのです・・・いろんな意味で。
建物の前にはナポレオンを倒したウェリントンの銅像が・・・・はらはらどきどき(笑)。
1556年にトーマス・グレシャムという商人が、ベルギーのアントワープにあった株式取引所をモデルにして、自費で見目美しい取引所をたてたいので土地を提供して欲しいとお上に願いでたそうです。彼はは商人と仲買人が交流して取引ができるようにとオフィスやトレーディングルームや店舗が一箇所に集合した場所を作ろうとしたとのこと。この人はかなり謎の人ですが、経済などでは「グレシャムの法則」でお馴染みの人物・・・「悪貨は良貨を駆逐する」(実質的な価値の低いもの(貨幣)が実質的に価値のあるものを流通過程で締め出してしまうという意)という言葉はご存知の方も多いことでしょう。彼のお陰で当時の王室は借金を清算することができ、その功績もたたえられ、ナイトの称号を与えられました。この方面に詳しい人にはおなじみの、バッタの紋章のおじさんです。(笑)
この実質的な価値の低い(ない)ものが(価値あるものをおいやって)世の中を席捲していく様はお金のしくみにはじまり、今の世の中全てにあてはまるとおもいませんか?経済のことは詳しくないのですが、よく言われるとおり、世界が「金本位制」を離脱して以来、世の中の価値やあり方が従来の想像を超えて膨張、迷走しはじめたようなかんじです。
当時借金に困っていた王室に対して、質を落として流通していた通貨の質を従来どおり高めるように助言し、その危機を救ったということで知られているわけですが、これって抽象的に現代社会での私達の生きるヒントになるような気もしています。興味のある方はいろいろとこのバッタのおじさんについて読んでみるといいかもしれません。
話はもどり、5年後の1571年にこの取引所をエリザベスI世が「Royal Exchange・ロイヤル・エクスチェンジ(王立取引所)」とします。
1666年のロンドンの大火で取引所は全焼してしまいましたが、すぐに復興せよと命をうけて当時の有名な建築家、エドワード・ジャーマンが再建に携わり、1669年には当時の市長であったウイリアム・ターナー卿により、オリジナルに酷似した取引所は、再開。
しかし、1838年に起きた火災で再び焼失。
その後、高名な建築家、ウイリアム・タイト卿によりオリジナルに近い形で再建され、1844年にヴィクトリア女王により三代目のロイヤル・エクスチェンジとして再開。これが現存する写真の建物だそうですが、無事に第二次世界大戦もくぐりぬけ、1991年には修復工事が施行されて現在の女王様、エリザベス2世が再開式をされたそうです。
実は、18世紀くらいまでは品位を損なう存在として、株のディーラーは立ち入り禁止だったそうで・・・。今でこそ、いいスーツ、いい靴、いい車に乗っているエリートとおもわれがちですが面白いもんです。(笑)
一時、この取引所は取引所としての活動を停止しますが、それでも80年代になり再開し、2001年までLIFE(ロンドン金融先物・オプション取引所)として機能していたということです。
という曲折を経て、現在は主にシティで働いている人のお買い物センターとなっているわけです。
それにしても、現在のシティはなんだか昔に比べて静かなかんじもしました。
日本企業のロゴもちらほらまだありましたけれども・・・。
などと、ショッピングセンターを出て脇に聖ミカエルを祀るひっそりとした教会がありました。なんだか場違いなかんじです・・・が、どうしてここに残っているのか・・・。
こちらは教会でよくみる像・・・・おそろしげですが・・・お乳を与えているのかと思い勝ちですが、鳥ですからお乳は与えない・・・じゃあこれは何ですか?と思いますよね。

この鳥はペリカン。
ちょっとくつろいでいる肉付きのよい姿の写真で失礼しますが、ご確認まで・・・。

ペリカンは自分のおなかというか胸を破って、自ら子供に血を飲ませて育てるという伝説があるそうです。凄まじいかんじですが・・・子孫への愛が強いとしてこうして教会に像がかざられているというわけです・・・。イギリスではみかけますが、フランスではこういう像はあまりみかけません。
世の中でお金というのは「血」に譬えられるという話もあります。
お金ということについて、また考えてしまいそうです。
私達がパンや野菜を買うお金と、取引所で動く(いているかのような)お金はまた別のものだともおもったりする、秋のシティでした。
お腹もすいたことですし、イングランド銀行で変えてもらったお金で、お昼にしようということに。
久しぶりにストランドにある老舗正当英国料理店・シンプソンズへ・・・。
名物の生後28日未満のリブを頂きましたが、あいかわらず美味・・・。
ただ、昔に比べると付け合せなどの量がかなり普通になりました・・・以前は全部食べたら翌日寝込みそうなかんじでしたが。ワインはピノ・ノアール、全てにわたりワインは高いけどかなりレベルの高い旨さ・・・イギリスのワイン好きはハイブローだというが納得。それにしても、給仕係りの人にイギリス人が殆どいないのが驚きでした・・・・ちょっと残念。一方、主人が喜んだことに、私達を出迎えてくれたのはフランス人のソムリエ君。なんか、時代の変化を感じるにゃあ・・・。
とにかく、肉食の文化を「味わう」にはとてもよい場所です。
Simpson's in the Strand
100 Strand
電話・02078369112
最寄り駅・Charing Cross
一見、関係のなさそうな本ですが、大いに関係があると思います。
エンデ氏はお金とは何かを追い続けた時期がありました。
彼は全てをつきぬけて世の中を見通していたんでしょうね、だからこんな作品が書けた。
シティでこの本を思い出すというのも、私的な面白い出来事でした。