先日、久しぶりに映画館に映画をみにいきました。
Paulo Morelli監督初作品、Cidade dos homens、英訳すると「City of men」です。
こちらの作品は、2000年の衝撃的な作品、「City Of God」の続編として製作されたもよう。
これは日本でもファンの多い、ブラジルは貧民街(ファヴェーラ)でしたたかに生きる子供達〜若者の姿を通して、ブラジルの問題を武器密輸、麻薬、暴力などを通して見事に描いた傑作がありました・・・原作を読むと多少違うのですが、それでも大変よくできた映画(私がいうのも甚だおこがましいけれど)でしたよ・・・。勿論、DVDを何度もみています。
この作品で一番、面白いのが、ごく一部を除いてはほとんどが素人を起用したキャスティングで、演技始動などの白熱した人間対人間といったかんじのきれいごとでない、まさにリアルなメイキングなども見所でした。小さな子供でまったくの素人なのに、迫真の演技をしています。私はメイキングも何度みたかしれません。
今回は、「神の街」から「人間の街」というかんじでタイトルを変えて、場所は同じくリオのファヴェーラ、時代設定が今回は現代というかんじになっています。主人公のアセロラという黒人の少年は前作と同じ俳優を使っています。前作と同じく、いろんな状況、誘惑や強制を上手くかわしながら、悪の中にあって悪にそまらず、「かたぎ」でファヴェーラを抜け出そうという主人公を演じています。
このPaulo Morelliという監督は、もともとは建築を大学で専攻、テレビの番組制作などの経歴を経て今回、監督になったということ。多くのブラジル人と同じように、自国の状態を鋭く冷静にみつめながらも、人間としての憤りや悲しみや問題意識、愛をもって映画を作っているというのがよく伝わってくる映画でした。
ブラジル映画をご存知の方はおなじみの通り、この映画、やはりかなり唐突な場面の変わり方をしたりします・・・・出てくるポルトガル語も口語表現が多く、ブラジル人らしく「あれをそうやって、こんなかんじ」という、文脈依存主義的な話しっぷり、音楽や登場人物の体の動きなんかが、まさにブラジルしていて、今すぐにでも飛んでいきたくなるかんじでした・・・・。(笑)とはいっても、私は通りを歩くことも、ましてやファヴェーラに行ったこともありませんが・・・。
この映画のテーマはブラジルの社会問題、「無責任さ」もしくは「父親不在」ということです。
フランスでも片親というのは全然、珍しいことではないのですが、フランスとブラジルでは社会制度や保障など、背景が全然違います・・・もっと違うのが、ブラジルやアフリカではよく聞く話ですが、男性が子供を作ると作りっぱなしでいなくなってしまうということです。10代の遊びたいさかりに子供ができ、たいていは自分の親や祖母に子供をおしつけていく、さもなくば子供をおきざりにしていく、そんな母親がたくさんいます。
この監督は、そういった部分についても焦点をあてていると同時に、実は政治家、社会全体の無責任さについて語りたかったと話しています。問題があることはわかっていて、変えなくてはいけないことがあるとはっきりしていても、一部の人の利権などで延々としてなにも改善されない。結局、ファヴェーラで生きるような境遇の人は、その場しのぎで生きていくしかないわけです・・・ただ、この映画では、そういう監督のコメントというかメッセージは殆ど描かれていません。「父親」と「息子」というテーマについてファヴェーラという特殊な背景でもって描いているというかんじです。
こういう人達を動物的、文化のない土地とか、いろいろ批判する人もいます。
確かに係わり合いに一生ならないで生きるジャンルの人達でしょう。
でも、なけなしの状況で生きるかれらも、豊かといわれる社会に生きる私達もj実は同じ原理でまわる社会に生きているのかもしれません・・・。
例えば、人間というものは群れをなすようになると、そこに力の関係が生まれてくるのはどこも同じです・・・。それを金銭的搾取(?)というか一部による間接的な利権の独占という形で収めるか、それとももっと原始的な形で殺し合いなどの暴力で収めるかという違いなんだなぁという感想を持ちました。
この監督は社会問題を提訴する「戦士」と評されているようですが、そういった怒りがありながらも、淡々とブラジルらしく、なんともリラックスした形でこの映画を作っています。かなり、暴力がテーマでありながら、ブラジルらしい心地よさが漂っている、リアルな雰囲気のある映画です。
ファヴェーラの子供達は一時、特にリオで万引きや強奪(10歳にみたないで銃を所持していたりして、強盗殺人なども子供がします)に悩む商店街の自治会が殺し屋を雇い、彼らの「虐殺」が頻発した時期がありました。子供からと「甘いこと」をいっていると、すぐに撃ち殺されてしまうような状態・・・。どちらがいいとか可愛そうとか、そういうベースがなりたたないところで、門外漢が批判をしてもことはおさまらなかったという一例です。
そういった子供達がどこからきたかといえば、貧しくて若いうちに子供ができてしまったティーンの両親がともに子供をおきざりにしたので、子供は本当に野良猫のようにして同じような境遇の仲間と逞しく育ちます・・・そして暴力や麻薬のグループに入りながら生き延び、暴力抗争であっさり死んでしまったりする場合が多いとききます・・・・「City of God」はそういう子供達の生態をリアルに描いています。
ちなみに、日本でも人気のミュージシャン、ソウ・ジョルジというブラジルの黒人ミュージシャンがいますが、彼はリオのファヴェーラの出身です・・・かれの壮絶な人生は、「モロ ノ ブラジル」というカウリスマキ監督の映画でも語られていますが、貧しさの中で、どうしようもなく、それでもなんとか生きようとしてみたものの、ファヴェーラの住人にもうとまれながら路上で10年以上も暮らし、兄が目の前で頭を撃ちぬかれ、母親が公衆トイレで寝泊りするのをみて殆ど、発狂するところまで精神も肉体も荒廃していたそうです・・・・しかし、彼は最高にラッキーで、容姿に恵まれていた上に、素晴らしい出会いと音楽の才能がありました・・・シンデレラのような幸運をつかみ、現在はマイアミで暮らしているそうです・・・・パリでコンサートに行ったことがありますが、彼の歌よりも、彼が幼い頃からなじんでいるというなつかしのサンバのメドレーを歌っているときに、私におそらくは感情が移ってきて、涙がでてきたことがあります・・・哀愁に満ちた地獄、それがブラジルの貧民街なのかもしれません・・・。
この映画、ブラジルの音楽のルーツから現代までをドキュメンタリーで辿った、フィンランドのロードムービーの監督、アキ・カウリスマキの作品。出来は?です。(笑)ただ、私も彼とおなじように、音楽や言葉、自然を通してブラジルが大好きになってしまっているという共通点があります・・・彼はこの映画によると、リオでライブクラブを経営し、現在はポルトガル語のタイトルにあるとおり「ブラジルに暮らす」そうです。
そういえば、ソウ・ジョルジは「City Of God」にも色男役(?)で出演しています。
それにしても、テーマが思い割には、からりとして美しいとさえ思えるこの映画、これぞブラジルの味というかんじの仕上がりでした。
現在は、もうひとつブラジルで興行成績一位となったやはりファヴェーラなどの暴力を描いた映画がかかっています。来週はそちらを鑑賞することにしたいと思います・・・・。
ご覧になっていない人は一度みてみてください。
問題は暴力云々ということよりむしろ、誰が彼らに武器を売って儲けてているのか、そういうルートがどうやって存在しているのか、そもそも、こういうものを製造しているのは誰のためなのか、私はむしろそちらのほうに世の中の関心が今後移っていくとおもいます。感情や暴力の悲惨さだけにのまれないで、根本を探るような映画が今後でることを期待します。
勿論、人間らしさと人間の獣性と人情、こういったところもみどころです。